椎間板ヘルニア

2019年06月17日

椎間板ヘルニアはダックスフントなどの胴長犬種に多い疾患です。椎間板の突出が脊髄を圧迫すると、突然麻痺がおき歩けなくなってしまいます。治療には、薬による内科的療法や手術などがあり、麻痺の程度によって使い分けをしています。手術をせずに回復する症例もかなり多く、昨年我々が学会発表したデータでは、従来のものよりかなり多くの症例で手術なしでも歩けるようになることが証明されました。
 しかし、麻痺が深刻な症例では、手術の方が回復率が高いことには変わりはありません。当院では、丁寧なインフォームドコンセントをさせていただき、手術か内科的治療かを選択しています。

今回は手術を選択した症例の紹介です。

椎間板ヘルニアは、この写真のように元気な子が、突然、四肢の麻痺を起こし動けなくなってしまう、恐ろしい疾患です。椎間板物質が飛び出ることが原因ですが、通常のレントゲンでは判断のつかないことがほとんどです。そこで造影剤を使いCTを撮ることではっきりと診断をつけることができます。

この画像はCTに写った椎間板物質を三方向から見ています。
このように造影剤を使用したCT撮影により、手術部位を的確に見つけることができます。     
手術は背骨に小さな穴をあけて、椎間板物質を取り出します。

このように、きれいに脊髄が見えれば、圧迫は解除されています。

多くの症例において、手術後は2週間から数か月で元のように走り回れるようになります。しかし、圧迫の程度と麻痺からの時間の経過によっては、10%程度の子が手術をしても完治しません。
椎間板ヘルニアは麻痺がおこってから治療までの時間と、症例にあった適切な治療方針が重要となる疾患です。
少しでも異常を感じたら、ぜひ当院へご相談ください。

獣医師 松倉

犬の尿道結石

2019年05月14日

おしっこの仕方や回数がいつもと違うなと感じたことはありませんか?
今回はそういった症状が出た症例のご紹介です。

10歳去勢済みのマルチーズの男の子です。
前日までポタポタでていたおしっこが、今日は全く出なくなったという主訴で来院されました。
この子は以前から膀胱結石があることがエコーで分かっていたため、結石を防ぐフードを食べていましたが症状がでてしまいました。

レントゲン画像です。尿道に結石があるのがわかります。
麻酔をしないで、上手くカテーテルで膀胱内に押し戻せなかったので、麻酔下で手術をして取り出すことになりました。
全身麻酔下でまずは尿道にある結石を膀胱に戻し、その後開腹し膀胱から結石を取り出しました。

結石は検査の結果、ストラバイトを中心とした三成分混合結石でした。
結石にもいくつか種類がありますが、80%はストラバイトかシュウ酸カルシウムという種類だと言われています。
ストラバイトはフードで溶かすことが出来ると言われている結石ですが、詰まってしまった場合には手術が必要になりますし、結石を取った後も新しくできてしまうことを防ぐため、療養食のフードは続けていただく必要があります。

おしっこは一日出ないだけで全身状態に影響し、命に関わってきます。
おしっこの回数、色、出方が普段と違うなと感じた時はすぐにご相談ください。

獣医師 中島

呼吸音の異常

2019年04月22日

プロフィール
シェットランドシープドック、避妊済みメス、15歳6ヶ月。
病歴
食欲低下、震え、呼吸音がおかしいとの主訴で来院。
40℃の発熱も認められた。
検査
血液検査にて、CRP(炎症マーカー)の上昇、感染所見が認められた。
レントゲン検査を行う。


  
肺野全体に不透過性亢進がみられた。

診断・治療
細菌性肺炎を疑い抗生物質の治療を開始。

経過
治療開始2日目より、熱も下がり、呼吸も徐々に改善がみられた。
治療開始4日目の血液検査ではCRPの低下も認められ、食欲も回復してきた。
治療開始13日目の血液検査ではCRPは正常値まで下がり、
レントゲン検査でも改善が認められた。


肺炎の原因は色々ありますが、今回のケースは抗生物質に良好に反応がみられたため、
細菌感染が原因と思われました。
早期の治療で、回復も早く、食欲も出て元気になりました。

獣医師 川口

眼の違和感

2019年04月15日

数日前から右目のまばたきが多いことがあり、時々右目が
小さくなっていることがある、ということで来院された、シーズーです。
シーズーは眼のトラブルが多い犬種のひとつです。
この子も、今までに眼の表面に傷がついて治療をしたことがありました。

初回の診察では、涙は多いものの充血は軽度、傷も見られなかったので抗生物質の点眼をしながら様子を見ることにしました。
その後、悪化することはないもののやはり眼の違和感が続いているということで再度、診察となりました。 

 
  
やはり充血は軽度で、表面上は傷も認められませんでした。


   
しかし上のまぶたをめくると、小さなできものが見つかりました。
できものから、分泌物がでているように見えます。
このしこりが眼にあたり、違和感を生じさせているのではないかということで、検査も兼ね切開することにしました。
とても大人しくできたので、眼の表面麻酔点眼のみで切開、内容物の除去を行えました。 

 
    
切開すると中からにゅるにゅると分泌物が出てきて、
最終的にはこんなに平らになりました。


    

今回のしこりは、おそらくマイボーム腺という眼の潤いに必要な分泌物を出している腺がつまってしまったものだと思われます。
犬の眼のトラブルとしては決して珍しいものではありませんが、多くは瞼の上に、わかりやすいしこりとしてできます。
今回の様な瞼の裏にできることは珍しいので無事に発見、切除できてよかったですが、今後再発に注意が必要になります。

獣医師 湯藤

犬の腹腔内出血

2019年04月09日

症例 
シェットランドシープドッグ 避妊メス 13歳

アトピー性皮膚炎が酷く、皮膚症状で通院をしていた子です。

急に食欲がなくなり、立てなくなったと来院されました。
実は、この子は半年前にも同じ症状を起こしています。肝臓にできた癌(肝細胞癌)が腹腔内で破裂し、ショック状態だったのです。この時は肝臓の端から腫瘍ができていたので、比較的容易に手術を終え、その後元気に暮らしていました。しかし手術後、肝臓内での転移が見つかり、今回は転移した腫瘍が再び破裂したものでした。

今回は前回と異なり肝臓の中心部に腫瘍が発生しており、しかも2回目の手術となったために、かなり危険な手術となりました。それでも手術をしなければ、助からない状況であったために、飼い主様は手術を希望されました。

開腹後の肝臓の様子です。

真ん中の黒い部分が出血している肝臓です。
腫瘍の発生部分が肝臓の左側の根本に近く、左側の肝臓をすべて摘出しなければなりませんでした。

摘出した肝臓です。

多くの出血が見込まれたために、術中術後で輸血を200ml以上必要としました。
かなりリスクの高い手術でしたが、手術をしなければ、確実に亡くなっていた症例です。
手術後4か月が経過しましたが、元気に生活しています。

この症例の注目すべき症状は急激な虚脱です。
急に立てなくなるのは、腹腔内の出血か、心臓疾患の可能性が高いです。
いずれも命にかかわる状態なので、すぐに来院してください。

もう一つは輸血の重要性です。今回の手術も輸血なしでは不可能な手術だったと思います。当院にも献血を行える犬はいます。しかし、昨今の診療技術の向上により、手術が可能な症例は増えています。その分、輸血が必要な症例も増えています。当院の犬だけでは血が足りません。また人間のように血液バンクは存在しません(現在の法律では犬の血液バンクは存在できないのです)。献血にご協力いただける子には感謝しきれません。体重20Kg以上の健康で大人しく採血のできる犬を大募集中です。

獣医師 松倉

犬の角膜内皮障害による角膜浮腫

2019年04月07日

うちの子の目が白くなってきている。白内障になっていませんか?というご相談を受けることがよくあります。そこで今回は「目が白い」症例についてご説明したいと思います。

「目が白い」と言っても、目のどこが白いのかによって問題が異なってきます。そこでまずは目の構造についてご説明致します。物を見る際は、光が「角膜」「前房」「水晶体」「硝子体」を通過し、網膜で光を感じ取り脳へ電気信号が送られます。各組織は光が通過しやすいように、どの組織も透明性を保っています。そのどこかが白く濁ることで、「目が白い」となります。

今回の症例はは最近「目が白い」との事で、診察に来られました。眼科検査の結果、白い濁りは「角膜」にあり、角膜浮腫を起こしている事がわかりました。

角膜にある角膜内皮細胞には、栄養を供給するために角膜に眼房水を出し入れする機能があります。この角膜内皮細胞の機能が落ちる事で、角膜の水分を角膜の外に出す事が出来なくなり、角膜浮腫が起こります。角膜浮腫が起こると角膜の透明性がなくなり、白く濁ってしまいます。また浮腫を起こした角膜は傷が治りにくく、治療が長引く事もあります。
一度壊れてしまった角膜内皮細胞は基本的には再生しません。そのため、治療の一つとして角膜の状態を良くする目薬を続けていく事が勧められます。この症例では半年ほど目薬での治療をしていますが、今の所大きな問題を起こしていません。しっかり目薬をしているおかげかもしれませんね。
このように「目が白い」と言っても様々な問題が考えられます。そのため、目の白さに気付かれた場合は診察の際にご相談ください。

獣医師 小松

猫の皮膚腫瘍

2019年04月07日

症例:
猫 メインクーン 11歳 避妊メス

経過:
右後肢の足根部に皮下腫瘤ができたとのことで来院されました。

レントゲン:

 右後肢 側方像


 左後肢 側方像


 後肢 正面像

腫瘤は足根の関節領域の皮膚の下にこぶし大に確認されました。その中心部にはレントゲンで濃い白く写るような不透過性の病変が確認されました。腫瘤は直径8cmと大きく膨らんでいましたが、骨組織への浸潤は認められませんでした。

経過:
痛みもなく歩行にも異常はありませんでしたが、数か月の間に急速に増大していたため、外科切除による治療を提案させていただきました。

手術:
全身麻酔下にて腫瘤の全摘出を実施しました。



                     
腫瘤がとても大きかったため一緒に切除する皮膚も広範囲になりましたが、筋肉も神経も損傷することなく無事に摘出できました。

摘出腫瘤 8cm×4cm×3.5cm

摘出腫瘤断面像:中心部に骨様の非常に硬い領域がありました(レントゲンで認めた不透過性の部分)。メスの刃でも切ることができないくらい硬い病変でした。

病理診断:
摘出腫瘤は外部の検査センターに診断を依頼しました。
結果は、仮骨性軟骨脂肪(Ossifying chondrolipoma)という病理診断でした。これは皮下脂肪組織の中に骨軟骨組織が存在するタイプの良性腫瘍です。このように脂肪組織の中に骨形成を伴っている病態は、動物では非常にまれなケースなのだそうです。腫瘤は手術ですべて切除できているので、今後は抗がん剤などの治療は行わず、再発がないか経過観察することになりました。

このケースのように、良性の腫瘤であっても大きくなりすぎたり、あるいは痛みを伴ったりする場合は将来的なリスクを考えて外科的な切除が治療に必要です。腫瘍の発生部位によっては、大きくなりすぎると手術で摘出できなくなったりしてしいますので、ペットの体にしこりをみつけたら早めに受診するようにしてください。

獣医師 吉村

猫の粉砕骨折手術

2018年07月28日

交通事故にあったところを保護された野良猫ちゃんです。推定年齢2〜3歳、茶トラで人懐こい男の子です。幸いにして内臓や肺の方にダメージは見つからなかったのですが、骨盤周辺に複数の骨折と脱臼があることが診察で分かりました。かなり痛々しい状況ですが、実は野良猫ちゃんの交通事故で骨盤の複雑骨折はよくあります。骨折していても、部位や症状によって手術をしないこともあるのですが、今回は保護された方と相談を重ねた上、手術することになりました。

▶手術経過

レントゲンではどうしても平面的な情報しか得られないので、縦と横のレントゲン情報を院長の頭の中で3次元に組み立てて手術を計画。手術中は、実際に入れているピンなどが思った位置に入っているか、レントゲンを確認しながら進めていきました。何度も調整しながら、仙腸関節の脱臼、大腿骨近位粉砕骨折を整復。骨髄内のピンだけでなく、創外固定という体の外に設置する器具も使用し、細かい作業の必要な手術になりました。

▶手術を終えて

手術は当初の想定より短い1時間半で無事に終了し、術後は痛みを抑えるために痛み止めをしっかり点滴。手術翌日からご飯をモリモリ食べてくれ、保護された方も一安心されていました。
骨盤骨折の場合、足が使えるようになるかはもちろんですが、排便排尿が自力でできるようになるかが、大きなポイントになります。術後炎症などの影響もあり、一時うまく排尿ができずに心配しましたが、無事に自分で排尿ができるようになりました。もちろん、歩行も可能です。
リハビリや創外固定をはずす処置など、まだまだ頑張らなくてはなりませんが、今は保護された方のお家で元気いっぱい幸せに暮らしています。

▶術後について

骨盤と大腿骨骨頭骨折の手術を無事に終えて、元気に退院した猫さんですが、骨の中にピンを入れただけでなく、体の外にも金属の器具を設置していました。退院後は元気余って自分でクッション材を取ってしまったり、器具で皮膚に炎症が起きてしまったりと、飼い主様にはちょっとドキドキの日々だったと思います。クッション材の交換や傷の消毒に定期的に通院してもらい、1ヶ月…レントゲンで骨の様子を確認し、晴れて器具を取りました。すっかり病院嫌いになって怖い顔をしていますが、歩く時もしっかり脚を使っていました。


そして先日抜ピンから2 ヶ月の定期検診に来てくれました。2ヶ月前には、まだ少し隙間があった部分もしっかり骨で埋まっています。もちろん歩行もできていて、元気いっぱいに暮らしているそうです。手術で刈った毛もすっかり生え揃い、ふくふくの可愛い猫ちゃんになっていました。
交通事故に合ったところを保護され、手術その後のケアと、猫ちゃんも飼い主さんも大変な夏だったと思いますが、すっかり飼い猫として幸せそうに暮らしているのを見て、とても癒やされた私達です。

獣医師 湯藤