胃腸内異物

2019年10月12日

異物による腸閉塞のため、開腹手術にて摘出した症例です。

症例は2歳のM.シュナウザーです。
嘔吐や主訴に他院を受診されましたが、はっきりした原因が分からず、
異物の可能性を指摘されたとの事で、催吐処置や内視鏡検査のご希望があり
来院されました。

嘔吐は様々な病気で起こってくる症状の1つです。
そのため、検査により原因を探り、治療法を見つける必要があります。

まず行った血液検査では、CRP(炎症マーカー)の軽度上昇はありましたが、その他は大きな異常はみられませんでした。
次に、レントゲン検査、エコー検査を実施しました。
レントゲン検査では明らかに映るような異物はありませんでした。

また、エコー検査では胃内に液体貯留が認められ、胃から腸にかけて異物らしき物が確認できました。
以上の検査、年齢や症状から考えても、異物による閉塞の可能性が高いと考えられました。

レントゲン検査で映らない異物の場合でも、レントゲン造影検査で異物かどうか診断できることもあるため実施しました。
この検査は、造影剤(バリウム)を投与し、その流れ方を時間ごとにみていきます

バリウム投与直後

通常、バリウムは胃内に入ってから1~4時間で排出されますが、4時間後のレントゲン写真でまだ胃内に沢山のバリウムが残っています。

バリウム投与1時間半後

4時間後のレントゲン

翌朝のレントゲンでも、バリウムが停滞し、流れが悪いことが分かります。
時間が経過しても、形の変わらないバリウム陰影が異物です。

以上の検査により、胃から小腸にかけて異物が存在することが分かり、開腹手術が適応となりました。
小腸を切開し異物にアプローチしましたが、異物が胃内にまでつながってしまっており、容易に取り出すことが出来ず、胃切開も行っての摘出となりました。

今回摘出した異物は、赤ちゃん用のお尻拭きでした。
そのため、比較的丈夫な繊維でできており、溶けたり破れたりもなく、
また飲み込んでいる量も多かったため、詰まってしまいました。
摘出した異物

異物があった場合の治療法としては、催吐処置、内視鏡による摘出、外科的開腹手術が挙げられますが、前者2つにおいては胃内に異物がある場合に適応となります。
今回の症例の場合、連続的な嘔吐が起こっていたため、胃より先の腸管に流れてしまっている可能性が考えられ、催吐処置や内視鏡での摘出は難しいと思われました。
レントゲン検査で映らない異物でしたが、レントゲン造影検査を行ったことで、異物の存在や閉塞している部位を明らかにすることができ、早い段階で開腹手術に踏み切ることができました。

獣医師 川口

猫の眼球摘出

2019年10月12日

今回は眼球摘出術についてご説明させていただきます。
眼球摘出術は名前の通り、眼球を取り除く手術になります。これを聞くと痛々しい気分になる方が多いかと思います。私も眼科医としてはなるべく眼球を温存してあげることを目指すのですが、時には必要になってくることもあります。今回は眼球摘出術が適応になる場合と、実際手術を行った症例をご紹介させていただきます。
眼球摘出術が適応となる場合としては、末期の緑内障があげられます。緑内障は眼圧が上昇することで、視覚を失ってしまう疾患になります。また眼圧が上昇することで強い痛みが生じるため、目をしょぼしょぼさせたり、目やにが多くなることがあります。痛みが強い場合には、食欲が落ちたり元気がなくなります。目薬で眼圧を下げることで痛みが軽減され、視覚が維持できることもありますが、眼圧が長時間上昇していた場合は、視覚を失って回復が困難なこともあります。また眼圧が高い状態が続くと神経が麻痺してしまい、痛みが少し和らぐことがあります。しかし痛みは消えることはないため、軽い頭痛のような状態が続いていると考えられます。既に視覚を失ってしまい、痛みが続いていると考えられる時には痛みを取り除いてあげるため、眼球摘出術が適応となります。また緑内障の場合には、眼球の中身だけを取り替えるような眼内シリコン義眼挿入術も適応となります。今回は眼球摘出術のご紹介のため、詳細は割愛します。
他にも眼球摘出術が適応になる場合として、目の癌が挙げられます。目の癌の場合は、視覚を失っていなかったとしても、今後転移などによって命に関わるような場合は眼球摘出術が勧められることもあります。しかしすべての目の癌が全身に転移するような悪性のものではありませんので、目の癌が疑わしい場合は一度獣医師に相談してください。
今回の症例は緑内障や癌ではないのですが、眼球摘出に至ったため、ご紹介させていただきます。

症例
雄猫、年齢不明、野外にいたのを保護され、当院に来院。

経過は不明ですが両眼とも失明していて、右目は眼球が拡張しており、左目は萎縮し眼球が小さくなっています。眼圧上昇や眼内腫瘍もみられないため、おそらく先天的な問題や発育異常が原因だと考えられます。
症例自身は痛みを感じているようなことはありませんでしたが、右目の眼球は拡張して角膜が重度に菲薄化していたため、穿孔する可能性がありました。そのため今後角膜穿孔によって痛みや感染が生じないよう、眼球摘出術を検討いたしました。また左目も眼球が小さくなることで瞼が内反し、眼球を刺激することで目ヤニが出ていました。そのため今後問題が起きないよう、両眼の眼球摘出術を実施することと致しました。

手術の写真は割愛させて頂きますが、手術後も元気な状態でした。そして里親も無事見つかり退院していきました。

こちらが手術後の写真になります。手術前より顔貌は良くなっているのではないでしょうか。またとても人懐っこい症例のため、病院スタッフ全員に愛されており、里親さんのもとでもとても幸せに暮らしているようです。

なぜ今回眼球摘出術を紹介させて頂いたかというと、眼球摘出術を選択肢としてご提案すると見た目が変わることに悩まれる飼い主さんが多いためです。もちろん自分の愛犬・愛猫の目がなくなってしまうことを考えると、とても抵抗があるとは思います。しかし眼球摘出をしてあげることで痛みが取れてより元気になる場合や、癌による転移の心配がなくなる場合がある、ということも知って頂きたいと思っています。その子にとって何が一番大事であるのか、痛みなく過ごすことなのか、それともなるべく麻酔がないようにしてあげることなのか。考え方は人それぞれではあると思いますが、よりよい選択をして頂きたいと思い、今回症例としてご紹介させて頂きました。もちろん見た目を温存する方法として前述した眼内シリコン義眼挿入術もあります。そのため、手術をしたほうがよいのか、手術をしないとどうなるのか、また手術の方法についてメリット・デメリットがどのようなものなのかについて知りたい方は、一度病院の方に来院されてご相談下さい。

獣医師 小松

慢性鼻炎の犬猫とネブライザー

2019年10月12日

今回は慢性的に鼻炎を繰り返す猫への、ネブライザー療法をご紹介します。

当院で使用しているネブライザー

吸入薬を霧状にし、鼻腔や気管に届けます。吸入薬は経口薬よりも少ない量で効果をだすことができます。
犬猫は人のように吸入部分を口に当てて吸い込むことができないため、当院では狭い部屋の中を霧で満たすことで対応しています。時間としては一回あたり15分〜20分程度で、お預かりして行うことが多いです。

【症例】
13歳 去勢済み オス猫
主訴:元気食欲はあるが、数日前からくしゃみをしいる
   くしゃみの回数と鼻水の量が増えてきて、鼻水の色が透明から黄色くなってきた
既往歴:尿石症(フードでコントロール中)
    以前にも鼻炎症状でたことがあるが、点鼻薬ですぐに改善
身体検査:発熱、体重減少などなし
     鼻鏡に傷、顔面の変形などはない
血液検査:異常なし
レントゲン検査:頭部胸部ともに異常なし
鼻汁の塗抹検査:好中球 ++ 好酸球 – 細菌 –

治療:検査で異常が認められなかったため、抗生物質の点鼻、ネブライザー、抗生物質の
内服を開始
   くしゃみの回数、鼻汁の量共に多かったため、ネブライザーは3日間連続で実施
治療4日目:くしゃみ、鼻汁ともにかなり減ってきたということでネブライザー
      は1日〜2日おきに減らし、あと一週間行うこととする
治療7日目:経過良好、抗生物質の内服を終了
治療11日目:症状はほぼなくなったのでネブライザーをやめ、点鼻薬のみにする
治療15日目:点鼻薬終了

治療当初にネブライザーを連日して行えたこともあり症状の改善はすぐにみられ、内服も最低限で終わらすことができました。しかし、治療終了から一ヶ月で同様の症状が再発してしまい、その後も治療に反応して良くなるもの鼻炎症状を繰り返すようになりました。
そこで症状が改善した後も定期的なネブライザーを行うようにしたところ、症状をコントロールできるようになっています。

犬猫の慢性鼻炎の原因として、口腔内環境の悪化によるもの、免疫介在性、ウイルス関連性、アレルギー性そして鼻腔内腫瘍など多くの疾患が考えられます。当院では検査結果や、治療への反応性などからどのような治療が適しているか常に判断しながら、必要であれば各種内服薬の処方もおこないますが、不要な内服薬処方を減らすため、また不快な鼻腔症状を素早く改善するためにネブライザーは有効な治療法であると考えています。
また、犬猫ともに鼻腔内腫瘍で苦しむ症例は少なくありません。腫瘍に対する根本的な治療はもちろん別に必要となりますが、ネブライザーを併用することで鼻腔内のつまり解消による食欲改善や、呼吸状態の改善などの効果が期待できることがあります。

ネブライザー治療は高頻度の通院が必要になるために、なかなか難しいこともあると思いますが、お預かり時間を長くすることで1日に2回ネブライザーを行うなど、対処できることもあると思います。是非ご相談ください。

獣医師 湯藤

腫瘍に対する温熱療法

2019年10月12日

温熱療法は腫瘍が他の細胞に比べ熱に弱いことを利用した治療法です。様々の方法により癌細胞に熱を加え治療を行います。人の医療で使用されるような高度な機械もありますが、当院の温熱療法はもう少し原始的です。腫瘍細胞を低温火傷によって死滅させるイメージです。

今回は手術が難しい場所にできてしまった腫瘍に対して、温熱療法を行った猫を紹介します。
使用するのは動物用に開発されているAMTC200という装置です。

熱を発する針金を腫瘍にさして低温火傷を起こさせます。

症例

雑種猫 12歳
既往歴 心膜横隔膜ヘルニア

顎の先端に腫瘍があり、上手にご飯が食べられなくなってきました。
他院で心臓が悪くて麻酔がかけられないと言われていたようですが、この子は心膜横隔膜ヘルニアという奇形であり、レントゲンでは心臓が大きく見えてしまうのですが、心臓そのものに異常はありません。そのため、麻酔をかけて病理検査を行うことができました。
結果:悪性末梢神経鞘腫瘍
これは、低悪性度と分類される腫瘍です。
悪性度が高くないので、遠隔転移などを起こすことは稀で命に別状はありません。
しかし腫瘍のできた場所が悪く、完全摘出を行うと下顎の骨を失うこととなります。
そこで温熱療法を試すことにしました。

手術時の写真です。



針を腫瘍にさして、熱を与えていきます(3枚目)。施術前(1,2枚目)にくらべ、施術後(4枚目)は少し黒くしぼんだようになっていることがわかります。

その後、10日後(上)壊死する部分が現れました。20日後には先端が崩れ落ちそうになりました。(下)

このまま、崩れ落ちてくれれば良かったのですが、顎の先端は血流も豊富で、これ以上は壊死が進みませんでした。
しかし、腫瘍と正常組織の境目の半分以上が壊死してくれたので、手術による切除が可能な状態となりました。
もう一度、温熱を当てながら、先端を切除する手術を行いました。


写真は2回目切除手術後(上)と更に1か月後です(下)
現在、2回目の手術から3か月が経過していますが、大きな再発にもなく順調で、フードも食べやすくなったようです。

当院の温熱療法は完治を求める治療ではありません。
しかし、手術が不可能な場所であっても、腫瘍の容積を減らすことができれば、生活の質を向上させることができる場合も多くあると思います。

獣医師 松倉

外陰部腫瘤により細菌性膀胱炎を繰り返した症例

2019年10月12日

症例プロフィール:ゴールデンレトリーバー
避妊雌 9歳4か月
既往歴:
変形性関節症による間欠的な股関節痛(体重管理、グルコサミン・コンドロイチン補充治療中)
左浅頚部の皮膚肥満細胞腫(外科摘出済み、パトネックグレードII、経過観察中)

主訴:
細菌性膀胱炎に起因する頻尿・血尿の症状に対して内科治療を行うも、治療終了後数週間で症状の再発を繰り返していた。

検査:
尿検査:
レントゲン検査:
超音波検査:
膀胱粘膜にわずかな肥厚は認めるが、明らかな腫瘤病変はなし
膀胱結石なし
その他の腹腔内臓器には著変なし

経過:
尿中細菌の培養結果に基づいた抗菌剤の投与、および尿路ケア用のフードに変更と猪苓湯による治療を行った。治療開始直後から治療中の症状は改善し、尿検査所見も正常化したため、一定期間の治療後に抗菌剤は休薬とした。しかし休薬後約1週間で膀胱炎の症状が再発していた。
再度身体チェックをおこなったところ、外陰部の内側に2cm大の硬い黒色腫瘤が確認された。腫瘤は膣の内腔を占拠している状態であった。

手術:
診断・治療を目的に、外陰部腫瘤の外科摘出を行った。

会陰切開で腫瘤全体の視野を確保し、腫瘤を摘出。

摘出後の腫瘤は病理学的検査を依頼した。

病理結果:
メラノサイトーマ
表皮直下から真皮から深部にかけてメラニン色素を含有するメラノサイト由来の腫瘍細胞が充実性に増殖している。腫瘍と周囲の境界は明瞭な部分と不明瞭な部分が混在している。悪性黒色腫に頻繁に認められる腫瘍細胞の表皮内増殖性は認められない。腫瘍細胞の核には多少の大小不同はあるが、核小体は小さく異型性は認められない。核分裂像は10視野当たり2~3個程度で、異常分裂像は確認されなかった。脈管浸潤は確認されなかった。

判断:
⇒悪性腫瘍との鑑別は難しいが、病理学的検査の結果から良性の腫瘍と判断した。外陰部の皮膚に発生した腫瘤が膣方向に拡大しているが、切除マージンは良好であるため、再発がないか経過観察とした。

考察:
腫瘍切除後は細菌性膀胱炎の治療も引き続き行ったが、現在は抗菌剤治療終了後も膀胱炎は再発せず経過は順調である。以上の経過から、膣の内腔が腫瘍によって物理的に占拠されていたことが、細菌増殖の温床となり、かつ膀胱炎の再発の原因になっていたと推測した。
実は今回ご紹介した本症例は、当院のアシスタントのライフです。今まで輸血で血液供給するためのドナー犬として、我々と一緒に患者様の治療に携わってきましたが、ドナーとしては引退することになりました。今後は身体の治療を最優先に、スタッフと一緒に頑張っていきたいと思います!

獣医師 吉村

犬のぶどう膜炎

2019年07月26日

今回は犬のぶどう膜炎について解説致します。
まず最初にぶどう膜とは「虹彩」・「毛様体」・「脈絡膜」を合わせた部位であり、その名の通り葡萄の皮のような色合いをしています。ぶどう膜は血管が豊富な組織であり、目に必要な栄養を供給する役割をしています。また全身の血液から目に有害な物質が入らないよう「関門」としての役割もあるとても大事な組織です。今回はそのぶどう膜に炎症が起こった際に見られる症状と実際にぶどう膜炎が見られた症例について解説致します。

症例
ミニチュアシュナウザーの1例
主訴:右眼をしょぼしょぼしている。同居犬の爪が当たってしまったかもしれない。
眼科検査所見
右眼の毛様充血、縮瞳、中程度の前房フレア、眼圧値正常、水晶体異常なし。眼超音波検査においても明らかな眼内腫瘤や網膜剥離はみられない。

左の写真では瞬膜の突出がみられており、右の写真では角膜と虹彩の間にある前房が白く混濁して見られます。下の右の図では反対の炎症が起こっていない眼ですが、前房が黒く写っています。前房は眼房水という透明な液体で満たされているため、光を当てても反射に影響しないため黒く写ります。しかし眼の中に炎症が生じると眼房水に炎症細胞などが浮遊するため光を反射し白く混濁してみられます。

これらの所見から、右眼のぶどう膜炎が生じていることがわかりました。そこでぶどう膜炎を起こす原因について考えなければいけないのですが

ぶどう膜炎の原因はこのように様々な原因によって起こります。そのため一つ一つ原因になりうる疾患を除外しながら、治療を考えなければいけません。
今回の症例では外傷性が疑われますが、明らかな外傷の痕跡がみられないため特発性の可能性も考えられます。
治療としては炎症を抑える点眼を使用して、2日後に様子を見ることに致しました。
2日後には症状がだいぶ軽減されたようですが、まだ炎症は残っていました。

左の写真では炎症が軽減し疼痛が取れたため、瞬膜の突出や縮瞳が改善されていました。しかし前房フレアは残存しており、右の写真では角膜と水晶体の間に炎症細胞が白い粒のように確認できます。
点眼を継続しながら、徐々に回数を減らして様子を定期的に観察したところ、1ヶ月後には炎症もみられなかったため治療を終了としました。
今回の症例では点眼に対する反応もよく無事に治癒することができましたが、ぶどう膜炎は悪化すると緑内障や白内障、網膜剥離といった失明に至る疾患を併発する可能性があるため、早期の発見と治療がとても重要になります。そのため「眼をしょぼしょぼしている」・「白目が赤い」・「黒目が白っぽい」などの症状がみられた場合は、早めに病院に来て頂くことをお勧めします。

獣医師 小松

犬の股関節脱臼

2019年07月25日

トイプードルの6歳の男の子が昨日から足が痛そうという事で来院されました。
病院内では足を触っても痛がるそぶりが無かったですが、歩き方を見ようとしても右後肢完全挙上だったため、レントゲンを撮りました。

右後肢の股関節脱臼が認められます。尾腹側脱臼です。(赤丸部分) 
また、今回の症状とは関係ありませんが膀胱内に結石が認められます。(矢印部分) 

股関節脱臼で発生率が一番高いとされるのは下のレントゲンのような頭背側方向の脱臼です。

同じ股関節脱臼ですが、今回の症例である腹尾側脱臼とは整復方法やその後の固定方法が異なります。
股関節脱臼は、大腿骨の骨頭が骨盤の寛骨臼から外れてしまった状態になることです。外傷性の股関節脱臼は、交通事故や落下などによって起こる事が多いです。
今回の症例は、遊んでいたときにびっくりしてこけてから足を痛そうにしているとのことでした。
股関節脱臼の治療には、手術をしないで整復し固定する方法と手術による方法があります。
今回は初めての脱臼という事と、脱臼してから時間がそんなに経っていなかったため、手術をせずに整復する方法をとりました。

麻酔下で無事に整復が成功しました。

整復後は包帯で固定します

尾腹側脱臼の場合の固定

頭背側脱臼の場合の固定

ただし、整復ですぐに戻せる脱臼はまた外れてしまうことも多く、再発する場合には、基本的には手術が推奨されます。

獣医師 中島

難治性外耳炎に対し初期に外科適応と判断した症例

2019年07月25日

難治性の外・中耳炎のため外耳道切除術を行った犬の紹介です
症例は3歳齢のイングリッシュ・コッカ―スパニエル犬です
1歳齢の頃から化膿性の外耳炎を繰り返し、洗浄・外用薬・内服薬を使いコントロールを試みましたが再発を繰り返していました。
外耳炎で診察を受ける犬は多くいます。
多くは短期的な治療で治りますが、再発を繰り返す症例は少なくありません。その際には、難治性となっている原因を探し、治療をしていくことになります。
アレルギー、ホルモン分泌低下症、耐性菌、ポリープなど原因となるトラブルは多くあります。
今回の症例も治療を行いながら原因となる疾患を除外していきましたが改善せず、スパニエル系という犬種が難治性の外耳炎を起こす犬種として知られているため、手術の適応と判断しました。
今回行った手術は犬の耳道の一部を切除し、通気性や管理性を上げるための外耳道切除術です

術前の様子

耳鏡での様子:外耳道に強い炎症が起きています

術中写真:犬の耳道は垂直耳道と水平耳道からなっています
今回は垂直耳道の切除を行うので、耳道移行部の位置を
確認し切除範囲を決めます

術中写真:垂直耳道を切開し折り返しているところです
丸で囲われている部分が新しく耳の穴となるところです

手術終了時
傷を縫い合わせ新しい入り口が形成されました

抜糸後の写真
傷は問題なく融合しました

外耳炎は命に関わる病気ではないため手術の決断がしづらい疾患ではありますが、経過が長くなると外耳道を構成する軟骨の骨化や、粘膜の潰瘍化などが起こり術後の癒合不全などの合併症を起こすリスクが高まります。
また、外耳道を切除する範囲も広がり顔面神経麻痺のリスクなどもでてきます。
今回の症例でも軽度の骨化や粘膜の潰瘍化は見られましたが、比較的早期に手術を行えたため術後の経過も良好でした。

外耳炎は耳だけの問題として思われがちですが、皮膚全体のトラブル、内分泌によるもの、食事性、遺伝的素因など体全体を診る必要性もでてきます。
当院でも耳以外の診察をしたり、定期的な通院による耳の洗浄を行うことなどで完治はしないものの維持できる症例が多く、外科適応までいく症例は少ないです。
今回のように遺伝的素因があるため早期に外科対応の必要がでるなど、思いがけない要因が外耳炎に絡んでいることがありますので、外耳炎の治療時には耳以外のことでも気づくことがあればご相談ください

獣医師 湯藤

犬の避妊手術

2019年07月17日

雌犬の避妊手術は、動物病院で日常的に行われている外科手術です。
それと同時に、「どうして若くて健康な犬なのに、麻酔をかけてまで手術しないといけないのですか?」と多くの質問を受ける手術でもあります。
ここでは避妊手術を行う理由と、当院の手術方法について説明したいと思います。

犬の性周期
 雌犬は、品種や飼育環境によってことなりますが、生後6~15か月で性成熟に達します。(小型犬の方が性成熟が早いと報告があります。)
そしてほとんどの犬が生後6~8か月齢時に初回の発情を迎えます。その後は平均7か月間隔で次の発情を迎えていきます。
 
避妊手術の目的
・永久的な避妊
・発情期に著しく体調を崩してしまう場合
・卵巣・子宮・膣などの疾患の治療
・乳腺腫瘍や肛門嚢腺癌などの雌性ホルモンが関与する病気の予防
・皮膚病、クッシング症候群、糖尿病などの雌性ホルモンの影響でコントロールすることができない内科疾患の治療

手術方法
 避妊手術とは、雌性ホルモンを産生する卵巣を摘出する手術です。卵巣を摘出すると子宮は経過とともに退縮していくため、避妊手術後に子宮の病気になることはありません。当院では、手術時に子宮の異常がない場合には卵巣のみを摘出する術式を用いています。

こちらは卵巣を摘出する際に使用する機械です。

卵巣周囲の動脈や静脈、脂肪組織などを焼いて止血することができます。お腹の中に縫合糸などの異物を残さずに卵巣を摘出することができるため、術後の炎症を最小限に留めることができます。また、お腹を大きく開かずに卵巣にアプローチできるため、傷口も小さくて身体への影響が最小限になるメリットもあります。手術時間も短くなります。

よくある質問
Q.避妊手術をすると肥満になりますか?
A.なります。
避妊手術後には食欲抑制効果のあるエストロジェンの分泌がなくなるので、通常は食欲が増進して肥満になりやすい傾向があります。卵巣除去後は、生体に必要なカロリーが15~20%減少するため、手術前と同じカロリーの食事を与え続けると肥満になりやすいと報告されています。

Q.避妊手術後は行動や性格に変化がでますか?
A.変化する場合もあります。
発情期が問題行動に影響している可能性があるので、問題行動を修正するために避妊手術が有効であることもあります。しかし、問題行動を示した期間が長いと手術に対する反応が悪いとの報告があるので、必ずしも改善を期待できるとは言いきれません。

Q.子宮蓄膿症とはどういう病気ですか?
A.中年齢の避妊をしていない雌に発生する病気で、子宮の中に膿が貯まる救急疾患です。
子宮蓄膿症の発生率は9歳異常の未避妊の雌で66%以上と言われています。発情後
平均8週間前後に発生する傾向があります。陰部から外の細菌が子宮の中まで侵入し、子宮の粘膜で増殖してしまいます。主な症状は元気・食欲の低下、多飲多尿、腹部膨満、発熱、陰部からの排膿などさまざまです。通常は緊急手術の適応で、治療時期を逸すると死亡することもあります。

Q.どのタイミングで避妊手術をすればいいですか?
A.手術は全身麻酔が必要になるため、当院では麻酔を安全に実施できる月齢まで成長を待ってからの手術をおすすめしています。目安は、小型犬は6カ月齢以降、大型犬は1歳以降ですが、個体によって差があるので診察にてご相談ください。

獣医師 吉村

椎間板ヘルニア

2019年06月17日

椎間板ヘルニアはダックスフントなどの胴長犬種に多い疾患です。椎間板の突出が脊髄を圧迫すると、突然麻痺がおき歩けなくなってしまいます。治療には、薬による内科的療法や手術などがあり、麻痺の程度によって使い分けをしています。手術をせずに回復する症例もかなり多く、昨年我々が学会発表したデータでは、従来のものよりかなり多くの症例で手術なしでも歩けるようになることが証明されました。
 しかし、麻痺が深刻な症例では、手術の方が回復率が高いことには変わりはありません。当院では、丁寧なインフォームドコンセントをさせていただき、手術か内科的治療かを選択しています。

今回は手術を選択した症例の紹介です。

椎間板ヘルニアは、この写真のように元気な子が、突然、四肢の麻痺を起こし動けなくなってしまう、恐ろしい疾患です。椎間板物質が飛び出ることが原因ですが、通常のレントゲンでは判断のつかないことがほとんどです。そこで造影剤を使いCTを撮ることではっきりと診断をつけることができます。

この画像はCTに写った椎間板物質を三方向から見ています。
このように造影剤を使用したCT撮影により、手術部位を的確に見つけることができます。     
手術は背骨に小さな穴をあけて、椎間板物質を取り出します。

このように、きれいに脊髄が見えれば、圧迫は解除されています。

多くの症例において、手術後は2週間から数か月で元のように走り回れるようになります。しかし、圧迫の程度と麻痺からの時間の経過によっては、10%程度の子が手術をしても完治しません。
椎間板ヘルニアは麻痺がおこってから治療までの時間と、症例にあった適切な治療方針が重要となる疾患です。
少しでも異常を感じたら、ぜひ当院へご相談ください。

獣医師 松倉