猫の皮膚腫瘍

2019年04月07日

症例:
猫 メインクーン 11歳 避妊メス

経過:
右後肢の足根部に皮下腫瘤ができたとのことで来院されました。

レントゲン:

 右後肢 側方像


 左後肢 側方像


 後肢 正面像

腫瘤は足根の関節領域の皮膚の下にこぶし大に確認されました。その中心部にはレントゲンで濃い白く写るような不透過性の病変が確認されました。腫瘤は直径8cmと大きく膨らんでいましたが、骨組織への浸潤は認められませんでした。

経過:
痛みもなく歩行にも異常はありませんでしたが、数か月の間に急速に増大していたため、外科切除による治療を提案させていただきました。

手術:
全身麻酔下にて腫瘤の全摘出を実施しました。



                     
腫瘤がとても大きかったため一緒に切除する皮膚も広範囲になりましたが、筋肉も神経も損傷することなく無事に摘出できました。

摘出腫瘤 8cm×4cm×3.5cm

摘出腫瘤断面像:中心部に骨様の非常に硬い領域がありました(レントゲンで認めた不透過性の部分)。メスの刃でも切ることができないくらい硬い病変でした。

病理診断:
摘出腫瘤は外部の検査センターに診断を依頼しました。
結果は、仮骨性軟骨脂肪(Ossifying chondrolipoma)という病理診断でした。これは皮下脂肪組織の中に骨軟骨組織が存在するタイプの良性腫瘍です。このように脂肪組織の中に骨形成を伴っている病態は、動物では非常にまれなケースなのだそうです。腫瘤は手術ですべて切除できているので、今後は抗がん剤などの治療は行わず、再発がないか経過観察することになりました。

このケースのように、良性の腫瘤であっても大きくなりすぎたり、あるいは痛みを伴ったりする場合は将来的なリスクを考えて外科的な切除が治療に必要です。腫瘍の発生部位によっては、大きくなりすぎると手術で摘出できなくなったりしてしいますので、ペットの体にしこりをみつけたら早めに受診するようにしてください。

獣医師 吉村

猫の粉砕骨折手術

2018年07月28日

交通事故にあったところを保護された野良猫ちゃんです。推定年齢2〜3歳、茶トラで人懐こい男の子です。幸いにして内臓や肺の方にダメージは見つからなかったのですが、骨盤周辺に複数の骨折と脱臼があることが診察で分かりました。かなり痛々しい状況ですが、実は野良猫ちゃんの交通事故で骨盤の複雑骨折はよくあります。骨折していても、部位や症状によって手術をしないこともあるのですが、今回は保護された方と相談を重ねた上、手術することになりました。

▶手術経過

レントゲンではどうしても平面的な情報しか得られないので、縦と横のレントゲン情報を院長の頭の中で3次元に組み立てて手術を計画。手術中は、実際に入れているピンなどが思った位置に入っているか、レントゲンを確認しながら進めていきました。何度も調整しながら、仙腸関節の脱臼、大腿骨近位粉砕骨折を整復。骨髄内のピンだけでなく、創外固定という体の外に設置する器具も使用し、細かい作業の必要な手術になりました。

▶手術を終えて

手術は当初の想定より短い1時間半で無事に終了し、術後は痛みを抑えるために痛み止めをしっかり点滴。手術翌日からご飯をモリモリ食べてくれ、保護された方も一安心されていました。
骨盤骨折の場合、足が使えるようになるかはもちろんですが、排便排尿が自力でできるようになるかが、大きなポイントになります。術後炎症などの影響もあり、一時うまく排尿ができずに心配しましたが、無事に自分で排尿ができるようになりました。もちろん、歩行も可能です。
リハビリや創外固定をはずす処置など、まだまだ頑張らなくてはなりませんが、今は保護された方のお家で元気いっぱい幸せに暮らしています。

▶術後について

骨盤と大腿骨骨頭骨折の手術を無事に終えて、元気に退院した猫さんですが、骨の中にピンを入れただけでなく、体の外にも金属の器具を設置していました。退院後は元気余って自分でクッション材を取ってしまったり、器具で皮膚に炎症が起きてしまったりと、飼い主様にはちょっとドキドキの日々だったと思います。クッション材の交換や傷の消毒に定期的に通院してもらい、1ヶ月…レントゲンで骨の様子を確認し、晴れて器具を取りました。すっかり病院嫌いになって怖い顔をしていますが、歩く時もしっかり脚を使っていました。


そして先日抜ピンから2 ヶ月の定期検診に来てくれました。2ヶ月前には、まだ少し隙間があった部分もしっかり骨で埋まっています。もちろん歩行もできていて、元気いっぱいに暮らしているそうです。手術で刈った毛もすっかり生え揃い、ふくふくの可愛い猫ちゃんになっていました。
交通事故に合ったところを保護され、手術その後のケアと、猫ちゃんも飼い主さんも大変な夏だったと思いますが、すっかり飼い猫として幸せそうに暮らしているのを見て、とても癒やされた私達です。

獣医師 湯藤