犬の腹腔内出血

2019年04月09日

症例 
シェットランドシープドッグ 避妊メス 13歳

アトピー性皮膚炎が酷く、皮膚症状で通院をしていた子です。

急に食欲がなくなり、立てなくなったと来院されました。
実は、この子は半年前にも同じ症状を起こしています。肝臓にできた癌(肝細胞癌)が腹腔内で破裂し、ショック状態だったのです。この時は肝臓の端から腫瘍ができていたので、比較的容易に手術を終え、その後元気に暮らしていました。しかし手術後、肝臓内での転移が見つかり、今回は転移した腫瘍が再び破裂したものでした。

今回は前回と異なり肝臓の中心部に腫瘍が発生しており、しかも2回目の手術となったために、かなり危険な手術となりました。それでも手術をしなければ、助からない状況であったために、飼い主様は手術を希望されました。

開腹後の肝臓の様子です。

真ん中の黒い部分が出血している肝臓です。
腫瘍の発生部分が肝臓の左側の根本に近く、左側の肝臓をすべて摘出しなければなりませんでした。

摘出した肝臓です。

多くの出血が見込まれたために、術中術後で輸血を200ml以上必要としました。
かなりリスクの高い手術でしたが、手術をしなければ、確実に亡くなっていた症例です。
手術後4か月が経過しましたが、元気に生活しています。

この症例の注目すべき症状は急激な虚脱です。
急に立てなくなるのは、腹腔内の出血か、心臓疾患の可能性が高いです。
いずれも命にかかわる状態なので、すぐに来院してください。

もう一つは輸血の重要性です。今回の手術も輸血なしでは不可能な手術だったと思います。当院にも献血を行える犬はいます。しかし、昨今の診療技術の向上により、手術が可能な症例は増えています。その分、輸血が必要な症例も増えています。当院の犬だけでは血が足りません。また人間のように血液バンクは存在しません(現在の法律では犬の血液バンクは存在できないのです)。献血にご協力いただける子には感謝しきれません。体重20Kg以上の健康で大人しく採血のできる犬を大募集中です。

獣医師 松倉

猫の皮膚腫瘍

2019年04月07日

症例:
猫 メインクーン 11歳 避妊メス

経過:
右後肢の足根部に皮下腫瘤ができたとのことで来院されました。

レントゲン:

 右後肢 側方像


 左後肢 側方像


 後肢 正面像

腫瘤は足根の関節領域の皮膚の下にこぶし大に確認されました。その中心部にはレントゲンで濃い白く写るような不透過性の病変が確認されました。腫瘤は直径8cmと大きく膨らんでいましたが、骨組織への浸潤は認められませんでした。

経過:
痛みもなく歩行にも異常はありませんでしたが、数か月の間に急速に増大していたため、外科切除による治療を提案させていただきました。

手術:
全身麻酔下にて腫瘤の全摘出を実施しました。



                     
腫瘤がとても大きかったため一緒に切除する皮膚も広範囲になりましたが、筋肉も神経も損傷することなく無事に摘出できました。

摘出腫瘤 8cm×4cm×3.5cm

摘出腫瘤断面像:中心部に骨様の非常に硬い領域がありました(レントゲンで認めた不透過性の部分)。メスの刃でも切ることができないくらい硬い病変でした。

病理診断:
摘出腫瘤は外部の検査センターに診断を依頼しました。
結果は、仮骨性軟骨脂肪(Ossifying chondrolipoma)という病理診断でした。これは皮下脂肪組織の中に骨軟骨組織が存在するタイプの良性腫瘍です。このように脂肪組織の中に骨形成を伴っている病態は、動物では非常にまれなケースなのだそうです。腫瘤は手術ですべて切除できているので、今後は抗がん剤などの治療は行わず、再発がないか経過観察することになりました。

このケースのように、良性の腫瘤であっても大きくなりすぎたり、あるいは痛みを伴ったりする場合は将来的なリスクを考えて外科的な切除が治療に必要です。腫瘍の発生部位によっては、大きくなりすぎると手術で摘出できなくなったりしてしいますので、ペットの体にしこりをみつけたら早めに受診するようにしてください。

獣医師 吉村