SFTSについて
こんにちは。暑い日が続いていますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?
夏の疲れがそろそろ出てくる頃なので、体調にお気をつけ下さい。
さて、今回は.重症熱性血小板減少症候群・SFTS(以下SFTS)についてお話しをしたいと思います。
<SFTSとは?>
主にSFTSウィルスを保有しているマダニ(フタトゲチマダニやキチマダニなど)に刺されることにより、感染するダニの媒介感染症です。
2011年に中国で命名された新規感染症疾患で、中国では2009年頃から発生が報告され、2012年には韓国でも発生が確認されました。日本では2012年に発症した海外渡航歴のない症例が初めての報告となります。SFTSの症例は西日本を中心に報告されていますが、近年では、推定される感染地は静岡県などを含む25府県に広がっているそうです(2021年7月現在)。感染症法は四類感染症となっています。
<感染経路>
病原体はSFTSウィルスです。ウィルスを保有している二タトゲチマダニ等のマダニに咬まれる、もしくはマダニに咬まれて感染した動物(野生-屋外で飼育されている動物)に咬傷または体液など触れたことにより感染します。
<SFTS発症動物について>
国内外においてSFTSウィルスに感染後、発症した動物への報告はありませんでしたが、国内で2017年に動物園のチーター2例のSFTSウィルス感染による死亡例が発表されました。その後SFTSウィルスに感染して発症した犬と猫から人への感染事例も報告されました。そして、これ以降2022年9月までに猫560症例、犬36症例がSFTSと確定診断されています。猫では2019年以降、毎年100例を超える発症例を確認していますが、犬では猫と比較して症例数は少ないそうです。
<人の症状は?>
潜伏期間は6-14日ぐらいとされています。
発熱、消化器症状(食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛)が主な症状で、ときに頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫張、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)など。
血液検査では血小板と白血球の減少がみられ、高齢者は重症化しやすい傾向があるそうです。
<人の治療法について>
有効な治療法はなく、対症療法が主です。致死率は20-30%です。
<犬猫の症状>
元気・食欲不振、発熱、白血球数減少、血小板減少。それに加え、猫では嘔吐および黄疸、総ビリルビンとSAA(炎症の数値を示すもの)の上昇、犬ではCRP(炎症の数値を示すもの)の上昇が認められています。
<犬猫の治療法について>
有効な治療法はなく、対症療法を行っていきます。致死率は犬で約30%、猫で60-70%となっています。
<マダニに咬まれないようにするには?>
春から秋(3-11月頃)にかけてマダニの活動が活発になります。野外でのレジャー(ハイキングなどで山林に入る場合やBBQ、キャンプなど)に出かけるときは長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を少なくし、虫よけ剤を使用しましょう。
虫よけ剤に含まれる成分のディートやイカリジンはマダニに対する回避効果があるそうです。
ただし、虫よけ剤を使用することでマダニの付着数は減少しますが完全に防ぐわけではありません。野外活動後はマダニがついてないかどうか確認しましょう。
<犬や猫の予防法>
毎月のマダニ予防を行うことが大切です。予防を行っていてもマダニに刺されてしまうこともあるので、草むらや茂みのある場所に立ち入らないようにしましょう。
もし、マダニに刺されていることに気が付いても、無理に引き抜こうとはせず、そのままご来院ください。マダニの一部が皮膚内に残ってしまう場合もあります。
マダニが媒介する病気は他にもライム病、回帰熱、日本紅斑熱、ダニ媒介脳炎などがあります。野外へ出かけるときは、予防対策を行ってレジャーを楽しんでください。