消化管間質腫瘍(GIST)
【症例】
ミニチュアプードル 11歳 去勢オス
【主訴】
10日程前から便が黒いという主訴でご来院。
超音波検査にて腸の腫れがみられたため、後日CT検査および外科手術による腫瘍切除が実施されました。
超音波検査でみられた腸管の腫れ
CT検査
【手術】
3ヶ所の腸管腫瘍をみとめたため全て切除。
【病理組織学検査】
消化管間質腫瘍(GIST)と診断。
【消化管間質腫瘍(GIST)】
消化管間質腫瘍は、消化管筋層内の細胞が腫瘍化する病気のことです。比較的稀な疾患で、近年少しずつ報告があがっています。
多発部位として、大腸→小腸→胃の順に多く、発症年齢は10歳前後からとされています。
臨床症状はみとめられない場合もあり、健康診断時の超音波検査で発見されることがあります。腫瘍が巨大化すると、消化管出血やお腹の張りがみられることもあります。
治療としては外科的切除が推奨されます。腹腔内への腫瘍成分播種の場合や、肝臓転移が疑われる場合など術後の管理も重要になります。
イマチニブという分子標的治療は細胞を殺す抗がん剤ではなく、突然変異を抑制する作用で増殖を抑えます。
GISTはイマチニブによる治療が奏効するとされており、副作用も少ないお薬です。
本症例も腫瘍切除後イマチニブの服用を行っており、副作用や再発は確認されておらず経過は良好です。現在も定期的な超音波検査にて観察を続けております。
今回の症例のように便が黒色を呈したり、消化管症状において些細な変化があればお伝えください。
年齢が上がってきた、健康診断等行ったことがない、などご心配がある場合もぜひ一度検査をおすすめいたします。
獣医師 酒井