猫の乳び胸|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

猫の乳び胸

【症例】

雑種猫 7歳 去勢オス

【主訴】

数日前から呼吸が早い。苦しそうな様子はない。

【検査】

血液検査では特に異常なし。X線検査では胸郭に水分の貯留が認められました。続いてエコー検査を実施したところ、胸水の貯留が認められたため、胸水を抜去し、検査機関に提出しました。

【診断】

特発性乳び胸

【治療】

貯留した胸水の抜去、サプリメントのルチンの投与を行いました。

治療開始直後は状態の良化が見られませんでしたが、徐々に状態は良化し、呼吸も落ち着いてきました。X線検査では一部肺のふくらみが見られませんが、胸水の貯留は改善しています。現在は時々呼吸が早い様子があるものの、おおむね状態が落ち着いていることから、定期健診にて状態の確認を行っていく予定です。

 

治療開始前。胸郭内に水分の貯留が見られます。

治療開始二か月後。胸郭内の水分が減っています。(上の画像と左右が反転しています。)

【猫の特発性乳び胸】

乳び胸とは、胸管などを通るリンパ液が何らかの理由で漏れ出し、胸腔内に貯留した状態のことをいいます。液体が胸に溜まることにより、呼吸困難等の症状がみられます。腫瘍や心疾患により起こることもあれば、原因が特定されない場合もあり、原因が特定されない場合、「特発性乳び胸」と診断します。今回は貯留液検査や画像の検査で腫瘍が認められなかったこと、血液検査で心臓のマーカーが基準値内であったこと等から、特発性乳び胸と診断いたしました。投与したルチンは、リンパ管の浮腫等を抑制するといわれており、猫の乳び胸において臨床症状の改善が期待できるサプリメントです。今回は時間経過により症状の改善が認められましたが、内科的治療を続けても症状が改善しない場合、手術が必要な事もあります。

今回の様に、明らかに苦しそうな症状が無くても、体の中では症状が進行していることがあります。いつもと違う様子がありましたら、ぜひ受診をお勧めいたします。

 

獣医師 守澤

 

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