猫の巨大結腸症|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

猫の巨大結腸症

巨大結腸症とは、大腸の一部である結腸が拡張し、便を送り出す蠕動運動が低下して、         非常に頑固な便秘を引き起こす疾患です。

排泄時間が長くなったり、しぶりを伴うなどの排便困難症状がみられます。
また排便時に悲鳴をあげたり、嘔吐をともなうこともあります。
食欲不振や脱水が続き全身状態が悪化すると、死に至る可能性もあります。

 

巨大結腸症が起こる原因は3つに分類されます。
①過去の骨盤骨折による骨盤狭窄や、腫瘍などによって結腸から先に便を送ることが困難になる

②神経的な異常による機能的な問題
③特発性(原因不明)

 

治療としては、まず用手排便や浣腸による便の排出を行い、療法食や便軟化剤などの内科的治療の反応をみます。

内科的治療がうまくいかない場合は、原因に応じて外科的治療を行うこともあります。

今回は内科的治療への反応が悪くなり、外科的治療を検討しましたが、
慢性便秘症改善薬であるモビコールの投薬により、改善がみられ手術を回避できた症例をご紹介します。

 

<症例> 雑種猫 10歳 避妊メス

<症状> 便秘、嘔吐、食欲低下

<経過> 過去の骨盤骨折により骨盤狭窄があり、以前より便秘を繰り返していました。
用手排便や便軟化剤、食事療法で改善がみられていた時期もありますが、再度排便困難な症状がみられました。

腹部レントゲン検査では骨盤腔手前で直腸が狭くなり、結腸に大量の宿便があります。
そのため、慢性便秘症改善薬であるモビコールを開始しました。
投薬を始めてすぐはあまり変化はみられませんでしたが、投薬開始2週間したころからホイップ状のかたさの排便がみられ、現在も順調にコントロール出来ています。

今回使用したモビコールの主要成分はマクロゴール4000です。
水に溶かして投与します。
浸透圧により保持された水分が途中で吸収されることなく腸に届くため、大腸内の水分量が増加します。
その結果、便が軟化し、便容積が増大することで、生理的に大腸の蠕動運動が活発化し、排便が促されます。
過剰投与すると下痢になりますが、副作用はほとんどありません。

 

モビコールは人体薬で、日本では大腸検査前の腸管洗浄の際の下剤としてのみ使用されていましたが、海外では慢性便秘症のガイドラインに推奨されています。日本においても、便秘症に対しての適応になり、2歳児から使用できる安全性の高いお薬です。

当院でも従来の便秘薬よりも、投薬後の反応が良い感触を得ています。

 

トイレに長くこもっていたり、痛そうに鳴いたりする様子が見られる場合、排便や排尿に異常がおこっている可能性が考えられます。対処が遅れると命に関わる場合もありますので、気になる様子がある場合はお早めにご相談ください。

獣医師 川口

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