犬のぶどう膜炎|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

犬のぶどう膜炎

※眼科を中心に診察している小松獣医師は第2,4日曜日のみの診察となります※

(出勤日は変更になることがございます。)

 

今回は犬のぶどう膜炎について解説致します。
まず最初にぶどう膜とは「虹彩」・「毛様体」・「脈絡膜」を合わせた部位であり、その名の通り葡萄の皮のような色合いをしています。ぶどう膜は血管が豊富な組織であり、目に必要な栄養を供給する役割をしています。また全身の血液から目に有害な物質が入らないよう「関門」としての役割もあるとても大事な組織です。今回はそのぶどう膜に炎症が起こった際に見られる症状と実際にぶどう膜炎が見られた症例について解説致します。

症例
ミニチュアシュナウザーの1例
主訴:右眼をしょぼしょぼしている。同居犬の爪が当たってしまったかもしれない。
眼科検査所見
右眼の毛様充血、縮瞳、中程度の前房フレア、眼圧値正常、水晶体異常なし。眼超音波検査においても明らかな眼内腫瘤や網膜剥離はみられない。

左の写真では瞬膜の突出がみられており、右の写真では角膜と虹彩の間にある前房が白く混濁して見られます。下の右の図では反対の炎症が起こっていない眼ですが、前房が黒く写っています。前房は眼房水という透明な液体で満たされているため、光を当てても反射に影響しないため黒く写ります。しかし眼の中に炎症が生じると眼房水に炎症細胞などが浮遊するため光を反射し白く混濁してみられます。

これらの所見から、右眼のぶどう膜炎が生じていることがわかりました。そこでぶどう膜炎を起こす原因について考えなければいけないのですが

ぶどう膜炎の原因はこのように様々な原因によって起こります。そのため一つ一つ原因になりうる疾患を除外しながら、治療を考えなければいけません。
今回の症例では外傷性が疑われますが、明らかな外傷の痕跡がみられないため特発性の可能性も考えられます。
治療としては炎症を抑える点眼を使用して、2日後に様子を見ることに致しました。
2日後には症状がだいぶ軽減されたようですが、まだ炎症は残っていました。

左の写真では炎症が軽減し疼痛が取れたため、瞬膜の突出や縮瞳が改善されていました。しかし前房フレアは残存しており、右の写真では角膜と水晶体の間に炎症細胞が白い粒のように確認できます。
点眼を継続しながら、徐々に回数を減らして様子を定期的に観察したところ、1ヶ月後には炎症もみられなかったため治療を終了としました。
今回の症例では点眼に対する反応もよく無事に治癒することができましたが、ぶどう膜炎は悪化すると緑内障や白内障、網膜剥離といった失明に至る疾患を併発する可能性があるため、早期の発見と治療がとても重要になります。そのため「眼をしょぼしょぼしている」・「白目が赤い」・「黒目が白っぽい」などの症状がみられた場合は、早めに病院に来て頂くことをお勧めします。

獣医師 小松

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