横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

犬の免疫介在性血小板減少症

犬・猫も人と同じように、免疫介在性の病気を発症することがあります。
本来は体にとって有害な外からの侵入者に対して発揮される力が、自分自身に向けられてしまう病気です。
ターゲットとなってしまう部位は、消化管・関節・血液など様々です。
今回の症例では、血液を構成する細胞の1つで、止血を担っている血小板が攻撃されて減少していました。

症例:ミックス犬(T・プードル×キャバリア) 未避妊雌 10歳

主訴:予防接種に来院されたが、排便後に若干の出血があったのが気になり健診として
血液検査を希望されました
血液検査:血小板数の著しい減少 600/µl(正常値30万/µl)
肝数値の軽度上昇、炎症マーカーであるCRPの軽度上昇
エコー検査:異常なし

顕微鏡を用いた血液塗抹の観察からも、血小板数の著しい低下を確認できました。
また、血小板消費を起こすような腫瘍や出血部位は認めませんでした。

※血小板は凝集しやすいため機械による検査数値だけで判断せず、顕微鏡による血液塗抹の観察が重要になります

 

以上より、免疫介在性血小板減少症と診断しました。

幸いにして、止血異常による貧血は認められませんでしたが、血小板数は著しく低下していたため、当日からステロイドによる免疫抑制の治療を開始しました。

 

【治療のポイント】
免疫抑制薬の第一選択肢には、ステロイド薬が選択されることが多いです。
ステロイド薬は効果的ですが、使う量によっては副作用の心配がついてまわります。
そのため、治療開始時に治療への効果が認められたあとは、減量していくことになります。
血小板数を確認しながら、肝臓や日常生活での副作用の出方を考慮しつつ、慎重に減量していくことが大切になります。

今回の症例では治療当初、血小板数は13万/µlまで上昇しましたが、薬の減量段階で再び6万/µlまで下がってしまいました。
長期にわたって服用するにはステロイド薬の量が多かったため、新しく免疫抑制剤のセルセプトを追加することにしまた。
セルセプトの追加により、血小板数は15万/µlまで回復し、現在は両薬の減量を行っています。
先日は、避妊手術を行うこともできました。


免疫疾患は、症例によって治療への反応も様々で、当院でも複数の免疫抑制薬を使い分けています
 

血小板減少症は、止血を担う血小板が減少してしまうことで、日常のささいなでき事で出血してしまいます。
血が止まらなくなる病気と聞くと、お家でもすぐ気付けそうに思えますが、
犬は毛でおおわれているため皮膚に痣ができていることに気付かずに、トリミングで発見されることもあります。
また、出血部位が消化管の表面だった場合には、メレナと呼ばれる黒いうんちが出て異常に気付かれることもあります。
診察でこの病気に気付いた時には、出血により貧血が進行していて輸血を必要とする状態になっていたこともありました。


痣は下腹などの皮膚が柔らかい部位や歯茎、肛門などの粘膜に見られることが多いです

 

 

小さな痣や、便がやけに黒いなど、気になるサインがある時は、ご相談ください

獣医師 湯藤

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