犬の皮下肥満細胞腫|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

犬の皮下肥満細胞腫

症例:バーニーズ・マウンテン・ドッグ 7歳齢 避妊雌

 

犬の皮膚肥満細胞腫は皮膚腫瘍の中でも約20%を占めます。

中高齢で発症する場合が多く、パグやゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバーが好発犬種と言われています。腫瘍の形態は様々ですが、体幹部に多く発生し、発赤や腫脹を伴ったり、出血、潰瘍等の症状を示す場合もあります。

肥満細胞腫は体中でアレルギー反応や炎症の過程に関わる「肥満細胞」という免疫細胞に起因します。「肥満」という名称がついていますが、体型との関連はありません。

 

今回の症例は右側腹部にしこりを見つけたとの主訴で来院されました。

発赤を伴う直径5cm程の腫瘤が認められ、痛みもある様子でした。

その時点ですぐに細胞診を行い、検査後には出血も認められました。

 

肥満細胞腫は細胞診により比較的容易に診断する事が可能です。

細胞質内に特徴的な多くの顆粒をもつ腫瘍細胞が認められる場合が多く、上の画像では顆粒をもつ肥満細胞は写っていませんが、バックグラウンドに多くの顆粒が存在している様子がわかります。

この細胞診の結果から皮膚の肥満細胞腫を疑い、今回の症例では炎症も強く、出血もあったため抗炎症を目的としてステロイドの投与を行いました。

4日後に摘出手術を実施し、その時点でステロイドの効果から腫瘍のサイズは一回り縮小し赤みも引いていました。摘出後に再度細胞診を行ったものが下の画像です。腫瘍細胞は認められますが、バックグラウンド中の顆粒が減少している事が分かります

 

 

広くマージンを取って摘出した腫瘤は病理検査に提出し、「皮下肥満細胞腫」との診断を頂きました。

肥満細胞腫は組織学的にグレード分類され、高グレードの場合には摘出手術以外に放射線療法や内科療法を組み合わせる場合があります。しかし近年このグレード分類は「皮膚肥満細胞腫」にのみ適応されており、今回の症例には当てはまりませんでした。病理検査の結果からは腫瘍細胞の分裂像は確認できなかった為、再発および転移のリスクは極めて低いとのことでした。

 

この病理検査結果および術後の経過から、今回の症例は追加の治療は行わず治療終了と致しました。

 

肥満細胞腫は比較的転移の多い腫瘍とされており、局所リンパ節や肝臓、脾臓、骨髄に認められます。その為、早期発見、早期治療が重要です。

ご自宅で皮膚にできものを発見した場合には注意深く観察して頂き、急激なサイズの拡大や発赤、疼痛等の炎症をともなっている様子がみられた際には早めの来院をよろしくお願い致します。

 

獣医師 亀山

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