膿胸|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

膿胸

<症例> 猫(エキゾチックショートヘア)10カ月齢 避妊メス

<主訴> 食欲低下、活動性低下

<症状> 呼吸がやや早く、体温は39.6度と高かった。

<検査> 血液検査にて、猫炎症マーカーSAAが高値、白血球数の上昇が認められました。
エコー検査にて、胸水の貯留が認められたため、レントゲン検査も実施しました。

胸水の貯留により、心臓の陰影が消失し、肺野の不透過性亢進がみられます。

胸水は様々な原因で貯留するため、まずは胸膜穿刺を行い検査用に胸水を採材しました。

胸水検査の結果、多数の細菌と細菌を貪食した好中球が認められたため、感染性の胸水で
あることが判明しました。
<診断> 膿胸(化膿性胸膜炎)

<治療> 胸腔内に貯留している胸水は膿であったため、出来る限り胸水を抜去し、抗生物質の投与
や皮下点滴を開始しました。
治療開始から徐々に胸水は減少し、食欲や活動性も上がり呼吸状態も安定してきました。
治療開始10日目のエコー検査では、胸水貯留はほとんど認められなくなりました。
レントゲン検査では心臓の陰影がはっきり見えるようになりました。

<まとめ>膿胸とは、胸腔内に何らかの理由で感染が広がり、膿が蓄積してしまう病気です。
犬、猫ともに発生がみられます。
犬ではイネ科植物や異物の穿孔から、猫では事故やケンカによる胸部外傷が多いとされて
いますが、原因がわからないことも多くあります。
初期は症状を示すことはなく、症状が出るまでには数週間かかり、胸水の増加に伴い、
食欲低下、元気消失、肺を圧迫することによる呼吸困難などがみられます。
治療が遅れて重症化してしまうと、治療が長引いたり、呼吸不全や敗血症で亡くなってし
まう事もあります。
治療は、原因となる細菌に対しての抗生剤投与による内科的治療、排膿および胸腔洗浄の
ための胸腔チューブの設置、開胸にて感染源や感染部位の摘出を行う外科的治療などがあ
ります。

今回の症例は、飼い主さんが異変に気付いた時点ですぐに来院して下さったこともあり、
重症化する前に治療を開始できました。
また当院では、猫の炎症マーカーであるSAAを院内で測定できますので、診断をより迅速
に行うことができました。
抗生剤に対しての治療反応も良く、現在内科的治療のみで維持できており、経過観察して
います。
獣医師 川口

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