口腔内形質細胞
形質細胞腫は免疫を作るリンパ球(Bリンパ球)の最終形態である形質細胞が腫瘍化する病気です。形質細胞が骨髄で腫瘍化し、時に致死的な経過をたどる多発性骨髄腫や、皮膚に出現する良性腫瘍の皮膚形質細胞腫などが一般的です。
しかし、この度はそのどちらでもない口腔内の髄外形質細胞腫と診断した犬の報告です。
口から出血していると来院されました。
歯肉にピンク色の腫瘤が数か所できていて、出血していました。
かなりの量の出血で、全身的にも貧血状態でした。
全身麻酔下で腫瘤の提出を行うことで止血することができました。また、CTを撮り腫瘍の浸潤や転移がないかを確認しました。
摘出後の病理検査で、髄外性形質細胞腫と診断されました。
形質細胞腫は良性で皮膚にできるタイプの場合には手術での摘出が第一選択となります。
また、摘出できない例や多発性骨髄腫を代表とする悪性の経過をたどる場合には、プレドニゾロンとメルファラン(抗癌剤の一種)による治療が一般的です。
今回も摘出後、残った細胞に対してプレドニゾロンとメルファランで治療を行いました。
この症例では中枢神経系の症状も発症し、歩行が困難になってしまいましたが、初発からは2年以上が経過しており、現在も出血はせず食欲もあり頑張っています。
完治は望めない場合も多いのですが、治療を行わないとかなりの出血を伴います。可能な限りの外科手術と術後の治療が望まれます。