肝臓腫瘍に対するCT撮影
・症例
シーズー 去勢オス 12歳
・主訴
かかりつけの動物病院にて肝臓癌と診断され、セカンドオピニオンをご希望で
来院されました。
・検査
触診 :腹部の腫脹
血液検査 :肝酵素値の上昇
超音波検査:肝臓右葉付近に腫瘍様の構造物
→これらの検査結果から、CT撮影を行い腹部の精査を行うこととなりました。
・CT撮影
全身麻酔下でCT撮影を行いました。
上図のように、肝臓右葉全域に渡って巨大な構造物(赤丸)が見られます。
肺やリンパ節などの器官への転移は見られません。
また、それが後大静脈という重要な血管(青矢印)に隣接しており圧迫していること、造影画像の比較から肝細胞癌の可能性が高いこともわかります。
→構造物の確定診断の為、超音波ガイド下でFNAを行い外部機関に病理学的診断を依頼しました。
・病理結果
肝臓腫瘍、とくに悪性の肝細胞癌が疑われるとのことです。
・判断
肝細胞癌は基本的に外科的摘出が適応となる腫瘍です。しかし本症例はCT撮影により、複数の葉に
浸潤しており、さらに後大静脈に極めて近い部位にも位置していることから、切除は不可能と判断しました。
このように、腹部CT撮影ではレントゲン撮影や超音波検査などだけでは得られない、詳細な腫瘤の形状や他の器官への転移、さらには腫瘍の種類の推測を行うことも可能となります。
また、本症例では残念ながら治療が適応外となりましたが、腫瘍の発見時期、腹腔内での分布の状況などにより、摘出が可能となる場合も数多くあります。
その為、早い段階での検査、発見が大切です。
獣医師 笹木