ひも状異物|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

ひも状異物

ひも状異物

 

嘔吐は動物病院への退院事由の中で常に上位を占めています。大きな病気からの嘔吐もあれば、軽い胃腸炎もあります。

その中で動物が嘔吐を理由に来院した際に、我々が必ず行う質問があります。

「何か食べてはいけないものを飲み込んだ可能性はありますか?」

言葉を話さない動物は(人間も赤ちゃんなどは注意が必要だと思います)自分で異物を誤食したことを申告できないので、我々は最初に必ず疑わなければなりません。

今回は誤食の中でも典型的なひも状の異物による腸閉塞を紹介します。

 

症例は生後10か月のオスの猫です。

 

嘔吐が始まった初日の一般的な胃腸炎の治療に反応がなく、エコー検査でも腸の様子が異常に思えたので、閉塞を疑いバリウム造影を行いました。

腸が、右左に規則的に蛇行しています。この像をアコーディオン状の陰影と言います。

これは紐や糸の誤食によって起こる腸閉塞の典型的なレントゲン画像です。

放っておくと糸や紐が腸を切り裂いてしまう状況ですので、すぐに開腹手術を行いました。

 

 

アコーディオン状の部分(水色丸)や閉塞でガスが溜まってパンパンになっている部分(黄色丸)がわかります。

幸いにもまだ腸は切れていませんでしたが、胃と腸を3か所も切開し、ようやく異物を取り出すことができました。

髪の毛を止めるゴム紐の一部が糸状にほつれ、本体を胃に残したまま腸が糸状部分を先へ先へと送ろうとしているために、腸が寄れてアコーディオン状になってしまいます。糸はとても細いので、腸が切れてしあうことがあるのです。

 

幼い動物は特に(人間も同じだと思いますが)遊びのつもりで異物を飲み込んでしまうことがあります。今回のような典型的な症例やレントゲンに写る金属の誤食などは診断が容易ですが、布やゴムなどレントゲンに映らないものが、部分的に閉塞を起こしている場合など、診断が難しいこともあります。

 

動物は遊びの一環で異物を口にすることが多いです。普段から危険な物は放置しない、おもちゃは口に入らないように大き目のモノを選ぶなど、普段から飼い主が注意してあげることが重要だと思います。

 

獣医師 松倉

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