指に発生した扁平上皮癌|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

指に発生した扁平上皮癌

【症例】
ラブラドール・レトリバー 12歳 避妊メス

【主訴】

右前肢の指が腫れていて、歩く時にも痛そうにしている

【レントゲン検査】

右前肢第3指の末節骨に骨融解像を認めました

 

☆骨の融解は感染などにより強い炎症が起きた際にも稀に起こりますが、

骨腫瘍の可能性が高くなります。また、骨の融解は強い痛み伴います。

 

実際に症例は跛行などの疼痛を示しており、抗生物質による感染治療にも良化反応を示さなかったことから、断指手術による疼痛緩和と病理診断による病気の確定をお薦めしました。

しかし手術が断指ということもあり、飼い主様のご希望で少し様子を見ることになりました。

 

初診から10ヵ月後:症例の疼痛管理のため、断指手術を行うことになりました

 

【レントゲン検査】

骨融解は中節骨にまで及んでいました

 

【手術】

右前肢第3指の切除と共に、術前のCT検査にて左浅頸リンパ節の腫大を認めたため、

転移の可能性を考慮し切除しました

【病理検査】

扁平上皮癌

病変部の切除マージン良好、血管などへの脈管浸潤なし

浅頸リンパ節への腫瘍浸潤なし

 

【術後経過】

術後経過は良好で、歩行時の疼痛、跛行もなくなりました

 

 

犬の指、とりわけ爪床部(爪の根本)に発生する腫瘍は、悪性度の高いものが多いことが

知られており、今回の扁平上皮癌のほかに悪性黒色腫(メラノーマ)が見られることがあります。

 

扁平上皮癌は転移する可能性は低いとされていますが、局所への浸潤性が高く適切な時期に

しっかりと切除範囲をとった手術を実施しなくては、再発する可能性が高くなります。

今回の症例でも、経過を観察する間に末節骨から中節骨への浸潤が認められました。

幸いにして基節骨への浸潤はなかったため、手術範囲も断指で済み、経過も良好です。

 

爪床部の腫瘍は初期には爪の変色・変形が見られることがあります。

もちろん皮膚炎などの影響で起きることもありますが、爪の変化や指の腫れに気付いた時には

お早めにご相談ください

 

 

獣医師 湯藤

 

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