蛋白漏出性腸症|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

蛋白漏出性腸症

蛋白漏出性腸症

 

【症例】

Tプードル 11歳 去勢オス

 

【主訴】

食欲低下、下痢、嘔吐

 

【経過】

胃腸炎症状があり、初期の血液検査では大きな異常は認められず、

皮下点滴や胃腸薬、抗生剤等の治療に反応し良化していましたが、

再発する間隔が短くなり、徐々に体重減少がみられました。

 

【検査】

血液検査にて、TP(総蛋白)と Alb(アルブミン)の重度の低下、CRP(炎症マーカー)の軽度上昇がみられました。

 

アルブミンは血液中の水分を保持している蛋白質のため、低くなってしまうと血液中の水分を血管内にとどめておくことができなくなり、胸水や腹水がたまってしまいます。

 

本症例でもエコー検査にて、軽度の胸水と腹水が認められました。

 

低アルブミン血症の主な原因としては、

  • 肝疾患や低栄養によるアルブミンの合成低下
  • 蛋白漏出性腎症、蛋白漏出性腸症、皮膚疾患(やけどなど)などの臓器からの漏出
  • 炎症による血管からの漏出

などがあげられます。

 

検査や身体所見から考えて、蛋白漏出性腸症が疑われました。

 

蛋白漏出性腸症の原因としては、腸リンパ管拡張症、炎症性腸疾患 消化器型リンパ腫などが考えられます。

原因によって治療方法が異なるため、確定診断のため内視鏡検査を実施しました。

 

 

内視鏡検査は麻酔下で、胃から小腸の粘膜を採材し、病理組織学的検査を行います。

 

【診断】

リンパ球・形質細胞性胃腸炎(炎症性腸疾患)

 

【治療】

炎症性腸疾患とは、胃、小腸、および大腸の粘膜において原因不明の慢性炎症を起こし、慢性の消化器症候群症状をおこす症候群です。

 

治療として、食事の変更や抗生剤等を用いて腸管内の抗原量を減らすこと、免疫抑制剤や抗炎症薬を用いて腸粘膜の炎症を抑えることが必要です。

 

本症例も、これらの治療に反応し、胃腸炎症状や血液検査の改善がみられています。

 

【まとめ】

下痢や嘔吐などの胃腸炎症状は日常的によくみられ、数日程度で自然に治るものが多いですが、長引く場合や体重減少がみられる場合は大きな病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。

気になる症状がみられる場合はご相談ください。

 

獣医師 川口

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