猫の好酸球性腸炎|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

猫の好酸球性腸炎

好酸球性腸炎は炎症性腸炎のひとつであり、好酸球が腸に浸潤して起こる病気です。

原因ははっきりとはわかっておりません。症状として嘔吐や小腸性の下痢を起こします。

 

近年、超音波診断装置の発達により腸のより良い画像が得られることができるようになりました。

今回は小腸のエコーに特徴的な所見がみられたのでご報告いたします。

また、この症例では触診ではっきりわかるほど、小腸が弾力のあるゴムのように固い状態となっていました。

以前、症例にのせた好酸球性硬化性線維症とは異なり、お腹の中に大きな腫瘤はつくりません。

小腸全体がゴムのような弾力を持ってしまい、動きが悪くなります。

 

本来、動物の小腸は超音波にて5層からなる縞模様に見えます。

図1は初診来院時の小腸の画像です。図2は治療後の小腸の画像です。

 

図1

図2

初診時では赤線が表す筋層に厚みがあります。層構造はきれいに保たれているのが特徴です。

治療により正常に近い状態にまで改善したのが図2となります。筋層の厚みが減っています。

 

確定診断のため、開腹手術にて小腸の全層生検を行い、病理結果として好酸球性腸炎と診断されました。

開腹時には、やはりゴムの様に弾力のある小腸が確認できました。

 

治療はステロイドが中心となります。高用量からスタートし、徐々に減らしていきます。

治療の効果が認められない場合には、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を使用する必要があります。

当院には今回の症例の他にも数例の同じ病気の猫がいますが、幸いにもどの子も薬の反応は良く、

図2に示すように画像上の改善が認められると共に、臨床症状も改善しています。

 

今回の様に5層構造を保ちつつ筋層が厚い子は好酸球性腸炎の可能性があります。

しかし、同じように筋層が厚くなる病態として、高分化型のリンパ腫も挙げられます。

治療方法が異なる病気となりますので、やはり可能な限り麻酔下での全層生検が望まれます。

 

文責 松倉

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