犬における脾臓の血腫|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

犬における脾臓の血腫

・症例

トイプードル 去勢オス 15歳

 

・経過

排尿した際にキャンと鳴き、震え、パンティングが見られるとの主訴で、夜間救急病院を受診されました。

腹部エコー検査において脾臓に腫瘤様病変、および血腹(腹部に血がたまること)が認められました。ただその時点で出血が止まっていることが予想され、状態が比較的安定していることもあり、一次退院となりました。

 

・判断

翌日当院を受診されました。再破裂のリスクがあることから飼い主様とご相談の上「脾臓の摘出手術」を行うこととなりました。

 

・手術

この時点では腫瘤の鑑別はできず、悪性の血管肉腫などの可能性は否定できません。よって麻酔による再出血の恐れもあるため、まず最優先で全身麻酔下において脾臓摘出を行いました。

 

※以下病変の画像があります。苦手な方はご注意ください※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上の画像が摘出した脾臓です。実際に7cmほどの球状の腫瘤が見られます。

病変の精査の為、検査機関に病理検査を依頼しました。

 

・CT撮影

また悪性腫瘍の場合には他の臓器に転移する可能性があります。

よって心臓や肝臓などに対する転移の有無の確認のため、CT撮影を行いました。

 

 

上図がCT画像です。

特に転移所見は見られませんでした。

 

・病理検査結果

診断結果は「血腫」です。いわゆる血豆のような状態あり、腫瘍性の病変ではありませんでした。こ

れは比較的高齢犬にみられることがありますが、破裂すると容体が急激に悪化し、虚脱、ショック

状態に陥り、出血によって命に関わることがあります。実際に救急病院に行かれた際にその状態で

あったものと推測されます。

 

【脾臓とは】

脾臓は造血(血を造ること)や免疫に関わる器官であり、血流に富む重要な臓器です。しかし、病変

があっても破裂して出血するなどが起こらない限り般的に症状が見られず、血液検査でも検出されにくいのが特徴です。よってエコー検査やCT検査等の画像検査で初めて判明することが多々あります。

 

【脾臓の腫瘤】

脾臓の腫瘤は2/3が悪性であり、その2/3が血管肉腫であるとされています。しかし、文献によっては1/2が良性・非腫瘍病変であるとのデータもあり、その多くが血腫です。本症例はその一つあたります。画像検査上では腫瘤の確定診断はできない為、必ずしも治療が必要なものであるとは限りません。

しかし、このような病変が認められた場合には、定期的なチェックによりサイズや形状の変化をしっかりと追っていくことが重要です。

 

 

獣医師 笹木

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