犬のリンパ球性白血病|横浜市磯子区の動物病院「洋光台ペットクリニック」

症例紹介

犬のリンパ球性白血病

【症例】 W・コーギー 14歳 去勢オス

【主訴】

下痢が治らず、食欲もなくなってきてしまった。

身体検査にて体重は維持されていましたが気持ち悪そうな様子もあり、血液検査をすることに

しました。

 

【血液検査】

白血球数の著しい増加と軽度貧血を認めました。

その他肝臓腎臓などの値は正常でしたが、炎症マーカーであるCRPは軽度上昇していました。

 

【血液塗抹検査】

CBC(前血球検査)で、総白血球数は285200/μl、正常値の10倍以上の値を示していました。

顕微鏡にて血液塗抹を確認すると、その多くがリンパ球でした。

 

【血液病理検査】

慢性リンパ球性白血病(CLL)を疑う

 

成熟したリンパ球が増加しているのがわかります

☆一般的に白血球と呼ばれているものは、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球の5種類を総称したものです。慢性リンパ球性白血病は、成熟リンパ球様細胞(つまり悪性度の低い腫瘍細胞)が著しく腫瘍性に増殖することで発症します。

慢性白血病は急性白血病とは異なり進行が非常に遅いため、健康診断などでリンパ球数の増加を認めた後、数カ月にわたり無症状で治療が必要のないこともあります。発症してから見られる症状は、疲れやすい、食欲不振、散発的な下痢・嘔吐など非特異的な症状です。

 

【治療】

本症例はリンパ球数が著しく上昇しており、食欲不振・下痢などの臨床症状もでているため、治療を開始しました。

ステロイド薬とクロラムブシルという抗がん剤を併用し治療を開始するもの、リンパ球数の減少が見られなかったため、クロラムブシルからアルケランという抗がん剤へと変更をしました。

これにより、一時期は43万/µℓあった総白血球数が次第に減少していき、116病日目には正常値範囲の1万7000/µℓまで減少し、その後も維持できています。

 

クロラムブシル、アルケラン共に内服タイプの抗がん剤で、副作用も出づらいタイプです。

今回の症例も散発的に下痢は起きてしまうものの、食欲はあり体重も回復できました。

CLLという病気は犬では中齢に発生しやすいとされ、猫ではとても稀な病気です。

悪性度が低いとはいえ、血液腫瘍ですので生涯に渡る治療が必要となります。

症状が下痢、嘔吐、食欲不振などのどの病気でも見られるようなものばかりであるうえに、

進行が緩やかなため発見が遅れてしまうこともあります。

すぐ治まるけれど、最近下痢を起こしやすいかも、なんとなく食欲ないかも?など、

気になる事がある時にはご相談ください

 

 

獣医師 湯藤

 

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