犬の腹腔内出血
症例
シェットランドシープドッグ 避妊メス 13歳
アトピー性皮膚炎が酷く、皮膚症状で通院をしていた子です。
急に食欲がなくなり、立てなくなったと来院されました。
実は、この子は半年前にも同じ症状を起こしています。肝臓にできた癌(肝細胞癌)が腹腔内で破裂し、ショック状態だったのです。この時は肝臓の端から腫瘍ができていたので、比較的容易に手術を終え、その後元気に暮らしていました。しかし手術後、肝臓内での転移が見つかり、今回は転移した腫瘍が再び破裂したものでした。
今回は前回と異なり肝臓の中心部に腫瘍が発生しており、しかも2回目の手術となったために、かなり危険な手術となりました。それでも手術をしなければ、助からない状況であったために、飼い主様は手術を希望されました。
開腹後の肝臓の様子です。
真ん中の黒い部分が出血している肝臓です。
腫瘍の発生部分が肝臓の左側の根本に近く、左側の肝臓をすべて摘出しなければなりませんでした。
摘出した肝臓です。
多くの出血が見込まれたために、術中術後で輸血を200ml以上必要としました。
かなりリスクの高い手術でしたが、手術をしなければ、確実に亡くなっていた症例です。
手術後4か月が経過しましたが、元気に生活しています。
この症例の注目すべき症状は急激な虚脱です。
急に立てなくなるのは、腹腔内の出血か、心臓疾患の可能性が高いです。
いずれも命にかかわる状態なので、すぐに来院してください。
もう一つは輸血の重要性です。今回の手術も輸血なしでは不可能な手術だったと思います。当院にも献血を行える犬はいます。しかし、昨今の診療技術の向上により、手術が可能な症例は増えています。その分、輸血が必要な症例も増えています。当院の犬だけでは血が足りません。また人間のように血液バンクは存在しません(現在の法律では犬の血液バンクは存在できないのです)。献血にご協力いただける子には感謝しきれません。体重20Kg以上の健康で大人しく採血のできる犬を大募集中です。
獣医師 松倉